いつ決める?何を決める?
| 順番 | 事業戦略(第2階層)の後、3階層の最後に決めます。「事業戦略を実現するために各機能は何をすべきか」という要求から逆算して施策を導きます。 |
|---|---|
| 作るタイミング | 毎期(年度ごと)に施策を更新します。3階層の中で最も更新頻度が高い戦略です。月次会議でKPIを確認し、四半期ごとに「3か月改善しない施策」の入替を判定します。 |
| 決めること | 機能ごとに、①施策(3つまで) ②担当(個人名) ③期限 ④KPI(現状値→目標値)。最後に部門間の整合(矛盾・負荷・順番・資金)を確認。 あわせて、機能を横断する戦略(DX・AI・データ・サステナビリティ・ナレッジ)の旗振り役も決めます |
| アウトプット | 機能別アクションプラン(全機能をA4で1枚に集約) |
| 決める人 | 部門長・現場リーダー(社長と一緒に。自分で決めた施策は実行され、与えられた施策は実行されません) |
全体の流れの中での位置づけは 戦略づくりロードマップ を参照してください。
6つの機能と、それぞれで決めること
各機能の詳しい決め方(手順・記入例・チェックリスト)は、機能ごとの詳細ページで解説しています。
🏭 生産・オペレーション戦略
品質・コスト・納期のどれを最優先するかを決め、設備投資・外注・内製の判断基準を揃えます。「差別化戦略なのに現場はコスト最優先」というズレが典型的な失敗です。
製造業でもう2つ重要な機能
バリューチェーンの「支援活動」にあたる機能です。小さな会社では製造や経営者が兼ねていることが多く、戦略として意識されないまま放置されがちな領域でもあります。
🔬 研究開発(R&D)戦略
何に技術を投資するかを決めます。中小企業では専任部署がなくても、「今期は◯◯の加工技術を確立する」「新素材のテストに月20時間を充てる」のように時間と人を確保することが実質のR&D戦略です。差別化の軸が技術なら、ここを放置すると数年で優位が消えます。
決めること:投資テーマ(2つまで)/確保する時間・人/試作の判断基準/知財(特許・ノウハウ秘匿)の方針
📦 調達・購買戦略
原価と納期の大部分は仕入れの段階で決まります。「毎回同じ相手に、言われた値段で」では利益は守れません。複数社の相見積り、まとめ発注、共同購買、そして仕入先との長期的な関係づくりのバランスを決めます。
決めること:主要品目の調達先(複数化するか)/価格改定への対応/在庫水準/仕入先との関係方針(取引条件・共同改善)
もう一つの軸:機能を「横断」する戦略
ここまでは縦の階層(全社→事業→機能)で見てきました。しかし近年は、複数の事業・機能をまたいで進める戦略が重要になっています。 特定の部署の仕事にすると必ず頓挫するため、誰が旗を振るか(たいていは社長)を最初に決めるのが成功条件です。
🤖 AI戦略
AIを「便利な道具」ではなく意思決定を支えるパートナーとして経営プロセスに組み込む視点。まずは見積り・文書作成・問い合わせ対応など、成果が測れる業務から。
📊 データ戦略
売上・原価・顧客・工程のデータを意思決定に使える形で集める方針。「後から分析したい数字を、今から取り始める」のが要点です。
🌱 サステナビリティ戦略
環境・人権・地域への配慮。中小企業では理念の話にとどまらず、大手取引先の調達要件(CO2排出量の報告など)として実務に降りてきます。
🛡 セキュリティ・BCP
情報セキュリティと事業継続。取引先から対策状況を問われる時代になり、「守り」ではなく取引条件・受注要件になりつつあります。
発展形:ナレッジマネジメントから「組織OS」へ
従来のナレッジマネジメントは「知識を残す」ことが目的でした。しかし実際に困るのは、知識そのものより「あの人ならどう判断するか」が残らないことです。そこで一歩進めて、良い判断を再現できる仕組み——いわば組織OS——を残すという考え方があります。
| 段階 | 残すもの | 具体例 |
|---|---|---|
| ① 知識を残す | 手順・マニュアル | 作業手順書、動画マニュアル、FAQ |
| ② 判断を残す | 判断基準と、その理由 | 「この条件の案件は受けない」「この場合は値引きせず価値を足す」+ なぜそう決めたか |
| ③ 記録を残す | 判断ログ・失敗事例 | 月次会議の議事メモ、失注理由の記録、撤退した施策とその学び |
| ④ 再現する | 新人・AIが同じ判断をできる状態 | 教育での活用、判断基準に沿ったチェックリスト、AIへの読み込み |
進め方は「目的を決める→対象業務を絞る→判断ログを記録する→基準を標準化する→仕組みに実装する」の順。いきなり全社をやろうとせず、属人化が最も痛い業務1つ(見積り、与信、値決めなど)から始めるのが現実的です。
本サイトのステップ5(月次会議の議事メモ)や環境分析の記録を残し続けること自体が、組織OSづくりの第一歩になります。
具体例で理解する
例:ミナト精工(年商30億円)の機能別戦略
- マーケティング:加工事例を発信する技術サイトと展示会出展で、装置メーカー開発部門からの問い合わせを作る
- 製造:段取り時間を45分→30分に短縮し、試作専用の機械枠を週3日確保して「試作5日納期」を実現
- 人事:熟練技能を動画マニュアル化し、重要工程の「複数名対応化」を進める。高専との連携で技能職を年5名採用
- 財務:5軸加工機1.2億円の投資を回収計算のうえ実行し、売掛金増加に備えて当座貸越枠2億円を設定
どの施策も、事業戦略(開発パートナーとしての差別化×高粗利分野へのシフト)から一直線につながっていることがポイントです。