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機能別戦略 5/6

💰 財務戦略
—— お金の流れに安全線を引く

会社は赤字では潰れません。潰れるのは現金が尽きたときです。財務戦略の第一の仕事は「攻めの投資」の前に、資金繰りの安全線を引くこと。守りが固まって初めて、戦略にお金を使えます。

いつ決める?何を決める?

順番他の機能別戦略と並行しつつ、最後に全機能の施策とお金を突き合わせるのが財務の役割です。各施策の投資額の合計が資金計画に収まるかを最終確認します。
タイミング安全線・投資基準は年1回見直し。資金繰りと主要数字は毎月必ず確認(月次会議の冒頭15分)
決めること①資金繰りの安全線 ②儲けの構造(粗利)の管理基準 ③投資の判断基準 ④借入の方針 ⑤月次で見る数字
KPIの例現預金月商倍率、粗利率、固定費額、売掛金の回収サイト、借入枠の余力

進め方:5つの作業

F-1

資金繰りの安全線を数字で決める

F-2

儲けの構造を「粗利」で掴む

売上は嘘をつきます。見るべきは粗利(売上−原価)です。

F-3

投資の判断基準を先に決める

基準内容
戦略整合「伸ばす」と決めた事業への投資か。維持事業への大型投資、戦略にない衝動的投資は原則見送り
回収期間投資額÷年間増加利益で3〜5年以内(生産戦略P-4と共通)
上限ルール「自己資金だけで払える額」または「月商◯か月分」を単独判断の上限にし、超える案件は税理士・金融機関に相談してから
安全線の維持投資後も現預金が安全線(F-1)を割らないこと。割るなら借入との併用を検討
F-4

借入との付き合い方を決める

F-5

月次で見る数字を5つに絞る

月次会議の冒頭で見る数字を固定します:①現預金残高(対安全線) ②売上 ③粗利率 ④固定費 ⑤売掛金の回収状況。試算表を全ページめくる必要はありません。この5つの増減の理由を言えることが「数字で経営している」状態です。顧問税理士には記帳代行だけでなく、月次の数字についての対話相手になってもらいましょう。

記入サンプル:ミナト精工の財務戦略

ミナト精工の例(年商30億円・経常利益9,000万円)

  • 安全線:現預金の下限を「月商2か月分=5億円」に設定。現状1.7か月分のため、低採算ロット整理による利益改善で2年かけて到達する計画
  • 粗利管理:事業別粗利で「汎用量産ロットが粗利率5%未満」と判明し、価格改定・縮小の根拠に。損益分岐点は月商約2.1億円と算出し、役員・部長で共有
  • 投資基準:単独判断の上限を3,000万円に設定。5軸加工機1.2億円は回収期間4年・補助金・借入併用を役員会と顧問税理士で確認して実行
  • 借入:産機・医療の拡大で売掛金(回収サイト約60日)が増えるため、当座貸越枠2億円を主力行と設定。年1回、戦略シートと試算表を持って主力行・準主力行へ近況報告
  • 月次:経営会議の冒頭15分で5つの数字(現預金・売上・粗利率・固定費・売掛回収)を確認。部長層にも開示し、「数字は経理だけのもの」をやめた
成長のワナ:卸や法人取引が増えると「掛け売り(後払い)」が増え、黒字なのに現金が減る局面が来ます。売上を伸ばす戦略には、必ず運転資金の手当て(回収サイトの交渉・借入枠)をセットにしてください。

よくある失敗と対策

財務でつまずくパターン

売上ばかり見て、粗利と現金を見ていない
月次の5つの数字(F-5)を固定し、売上より先に現預金と粗利率を見る習慣にする。
資金繰りが社長の頭の中にしかなく、本人も不安が消えない
簡易資金繰り表(3か月先まで)を月1回更新し、家族・番頭・税理士と共有する。書き出すだけで打ち手が早くなる。
無借金にこだわり、手元資金が薄いまま投資機会も逃す
「借入額」ではなく「現預金の厚み」で安全を測る。良いときに枠を作るのが正しい順番。
どんぶり勘定の投資が後から資金繰りを圧迫する
投資4基準(戦略整合・回収期間・上限・安全線)を通す手続きにする。即断したい案件ほど一晩置く。

財務戦略チェックリスト

  • 現預金の安全線(月商◯か月分)が数字で決まっている
  • 3か月先までの簡易資金繰り表を毎月更新している
  • 損益分岐点売上を即答できる
  • 商品・事業別の粗利率を把握し、戦略判断に使っている
  • 投資の判断基準(戦略整合・回収期間・上限・安全線)がある
  • 借入枠・公的金融を把握し、金融機関と平時から接点がある
  • 月次で見る数字が5つに絞られ、会議で共有されている
↑ 機能別戦略の全体像