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事業戦略 —— その土俵でどう勝つかを決める

事業戦略(競争戦略)は、全社戦略で決めた土俵の上で「誰に・何を・どうやって売り、競合とどう差をつけるか」を決める戦略です。中小企業の基本は「戦う場所を絞り、その一点で一番になる」こと。大手と同じ土俵で正面から戦わないのが鉄則です。

いつ決める?何を決める?

順番全社戦略(第1階層)の直後に決めます。全社で決めた土俵と資源配分が前提になるためです。事業が複数あれば事業ごとに1枚ずつ、優先度の高い事業から作ります。
作るタイミング全社戦略の確定後に作成。以後は年1回の戦略見直しで点検し、「勝ち負けの物差し」が連続未達のときや、競合環境が激変したとき(大手の商圏参入など)に臨時で見直します。
決めること①誰に(ターゲットと一人の顧客像) ②何を(提供価値) ③基本戦略と差別化の軸 ④価格方針 ⑤勝ち負けの物差し(数値指標)
アウトプット事業戦略シート(A4で1枚)× 事業の数
決める人社長・事業責任者(顧客の声・現場の事実を持つ人を交えて)

全体の流れの中での位置づけは 戦略づくりロードマップ を参照してください。

基本の道具:3C分析とポーターの基本戦略

フレームワーク

3C分析 —— まず現状を知る

  • 顧客(Customer):お客様は誰で、何に困り、何にお金を払うのか
  • 競合(Competitor):ライバルは誰で、何が強く、何が手薄か
  • 自社(Company):自社の強み・弱みは何か

顧客→競合→自社の順(外から内へ)で分析し、「顧客が求め、競合が提供できず、自社ができること」を探すのが出発点です。

フレームワーク

ポーターの3つの基本戦略

  • コストリーダーシップ:圧倒的な低コストで勝つ(規模が必要で中小には不向きなことが多い)
  • 差別化:品質・対応・専門性など「価格以外の価値」で選ばれる
  • 集中:特定の顧客層・地域・用途に絞って一番になる

中小企業の王道は「集中×差別化」。狭い市場のナンバーワンを狙います(ランチェスター戦略の弱者の戦い方と同じ発想です)。

ターゲットの決め方:「地域・属性(BtoBなら業種・規模・部門)・利用シーン・価値観」の4つの切り口で、実在の優良顧客をモデルに一人の顧客像(ペルソナ)まで絞り込みます。選ぶ基準は、市場性(十分な客数)・強みとの適合・競合の空白・接近可能性(届く手段があるか)の4つです。

「価値」とは顧客の変化量(Before → After)

提供価値を考えるとき、つい「商品の性能や量」で語りがちです。しかし顧客が払うのは自分がどれだけ変われるかに対してです。

Before(顧客の困った状態)After(解決された状態)
試作の精度不良で開発日程が崩れる図面段階で相談でき、日程どおりに進む
月末まで原価が分からない日次で採算が見える
作業に3時間かかる30分で終わる

変化量が大きいほど価値は高く、価格も通ります。逆に「性能は高いが、顧客の状態が何も変わらない」提案は売れません。自社の提供価値を、必ずこのBefore→Afterの形で書けるか確認してください。

事業戦略で使われる主なフレームワーク

答えたい問い使う道具中身
どう戦うか(基本方針)ポーターの基本戦略コストリーダーシップ / 差別化 / 集中。中小企業の王道は集中×差別化
競争を避けられないかブルーオーシャン戦略「業界の常識で増やす要素・減らす要素・取り除く要素・付け加える要素」を洗い出し、競争のない土俵を作る
弱者としてどう戦うかランチェスター戦略局地戦・一点集中・接近戦。狭い市場でナンバーワンを取る
儲かる仕組みになっているかビジネスモデルキャンバス顧客・提供価値・チャネル・関係・収益・資源・活動・パートナー・コストの9要素で事業全体を1枚に
顧客に刺さっているかバリュープロポジションキャンバス顧客の「悩み・望み・用事」と自社の「提供価値」が噛み合っているかを検証
ブルーオーシャンを中小企業で使うコツ:まったく新しい市場を発明する必要はありません。「業界では当然やっているが、実は顧客が求めていないこと」を減らす・やめるだけでも独自の位置が作れます(例:多品種の在庫、過剰な仕様、フルサービス)。減らした分を、顧客が本当に欲しい一点に集中させます。

具体例で理解する

例:ミナト精工の事業戦略(産業機械部品事業)

  • 誰に:大手量産案件の相見積り競争を追わず、「従業員100〜1,000名の装置メーカーの開発・設計部門」に絞る
  • 何を:「図面段階から相談でき、試作から量産まで一つの窓口で任せられる高精度加工」を提供価値にする
  • どう差をつける:量産専業の同業や商社にはできない「図面段階からのVE提案」「試作5日納期」で、開発パートナーの座を取る

単価勝負(コスト戦略)は海外調達に敵わないので、「開発パートナー」という差別化×開発部門への集中で戦う——これが事業戦略です。

自社への問い: 「お客様がライバルではなく、あえてうちを選ぶ理由」を具体的に3つ挙げられますか? その理由は、狙っているお客様にきちんと伝わっていますか?

次のアクション

📖 決め方の手順を学ぶ

ターゲットの絞り込み、差別化の軸の選び方、価格方針、ポジショニングマップまでを記入サンプルつきで解説しています。

→ ステップ3:事業戦略の決め方

❓ よくある疑問を見る

「差別化できる強みがない」「価格競争から抜け出したい」「業績への影響はどう試算する?」など。

→ 事業戦略のFAQ(8問)

✎ 自社の戦略を作る

入力するだけで戦略シートが完成し、PDFで保存できます。

→ 経営戦略シート作成ツール

↑ ロードマップ