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STEP 5 / 5

実行して、振り返る

戦略づくり最大の失敗は「作って満足し、実行されないこと」。このステップでは、戦略を回し続けるための仕組み(月次会議・見える化・見直しルール)をつくります。ここだけは「作業」ではなく「習慣」です。

このステップのゴール

次の3つの仕組みが「回っている」状態を目指します。初月に形を作り、3か月続けば習慣として定着します。

📋 仕組み1
KPIボード(月次更新)

ステップ4のKPIを1枚で見える化し、○△×の信号で状態がひと目でわかるもの。紙でも構いません。

📋 仕組み2
月次経営会議(60分)

毎月同じ日・同じ議題で開く定例会議。数字の確認と「次の一手」の決定までを1時間で行います。

📋 仕組み3
見直しのルール

「何が起きたら、どのレベルの戦略を見直すか」の取り決め。場当たり的な方針転換を防ぎます。

進め方:4つの仕組みづくり

5-1

KPIボードで数字を見える化する

ステップ4で決めたKPIを1枚の表にし、毎月の実績を記入して○△×の信号をつけます。凝ったシステムは不要で、Excel1枚か、事務所の壁に貼った紙で十分です。大事なのは全員が見える場所にあること

KPI目標(月次)4月5月6月信号
(施策のKPIを転記)○△×

▲ 信号の基準:○=目標達成、△=目標の8割以上、×=8割未満。基準を先に決めておくと、会議で「まあまあです」という曖昧な報告がなくなります。

5-2

月次経営会議を設計する(60分・議題固定)

会議は「毎月第1火曜の15時」のように日時を固定し、忙しくても飛ばさないこと。参加者は社長+施策の担当者(小さな会社なら全員)。議題も毎回同じにします。

時間議題やること・ルール
0〜15分 数字の確認 KPIボードと売上・粗利・現預金を見る。資料は事前配布し、会議では「読み上げ」をしない
15〜35分 施策の進捗 担当者が「○△×と、×の理由」だけを報告。×を責めない(責めると次から×が隠される)
35〜55分 ×への手当てを決める ×のKPIについて「やめる・やり方を変える・テコ入れする」のいずれかをその場で決める。持ち帰らない
55〜60分 決定事項の確認 「誰が・何を・いつまでに」を復唱し、1枚の議事メモに残す
会議を「報告会」にしない:月次会議の目的は報告ではなく意思決定です。「知っていることの確認」に時間を使わず、「×にどう手を打つか」に時間の半分以上を使ってください。
5-2'

知っておきたい実行フレームワーク(使うのは1つで十分)

戦略の実行を支える枠組みには複数の型があります。すべて導入する必要はありません。自社の課題に合うものを1つ選び、続けることのほうが重要です。

枠組み中身向いている会社
KPI + PDCA
本サイトの標準
目標指標を決め、計画→実行→確認→改善を回す まずはここから。ほとんどの中小企業に最適
KGI / KPI 最終ゴール(KGI)を分解して過程の指標(KPI)を置く 目標が「売上」しかなく、現場の行動につながっていない会社
OKR 定性的な目標(Objective)+ 3つ程度の成果指標(Key Results)を四半期ごとに設定。挑戦的な目標を全社で共有するのが特徴 変化が速く、四半期単位で方向を合わせ直したい会社
BSC
(バランススコアカード)
財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の4視点で目標を置く。財務偏重を防ぐ 数字を追うあまり、人材育成や顧客満足が後回しになっている会社
OODAループ 観察→状況判断→意思決定→実行。計画より即応を重視 現場判断の速さが競争力になる場面(トラブル対応・競合の急な動き)
使い分けの目安:年度の計画はPDCA(型を守って回す)、現場の日々の対応はOODA(速く動く)、という二段構えが実務的です。OKRやBSCは、KPI運用が定着してから検討すれば十分。枠組みを変えること自体は成果を生みません。
5-3

ズレたときの直し方:「戦術→戦略」の順で疑う

KPIが未達のとき、いきなり「戦略が間違っていた」と結論づけるのは早計です。下の階層(実行しやすいもの)から順に疑うのが原則です。

疑う順番問い見直しの目安
① 実行量そもそも決めた量をやったか?(訪問8件の予定が2件しかできていない等)毎月確認。未実行なら原因は戦略でなく時間・段取り
② やり方(戦術)量はやったが効果が出ない。手段を変えるべきでは?2〜3か月同じ×が続いたら戦術を変更
③ 施策そのもの手段を変えても動かない。この施策は筋が悪いのでは?3か月ルール:3か月改善しなければ撤退し、来期候補と入れ替え
④ 事業戦略・全社戦略複数の施策が揃って×。前提(ターゲット・差別化)が違うのでは?年1回の見直しで検討。ただし外部環境の激変時は臨時開催

戦略の見直しを「臨時」で行うトリガーもあらかじめ決めておきます。例:主要取引先の喪失、売上2割以上の急減、有力競合の商圏参入、大きな法改正・原価高騰。これ以外では戦略をコロコロ変えない、という歯止めにもなります。

5-4

年1回の戦略見直しと、社員への共有

年次見直し(半日〜1日)では、5つのステップを「差分更新」します。ゼロから作り直すのではなく、ステップ1の数字を最新化→ステップ2〜4の変更点だけ議論、という進め方なら半日で終わります。決算の1〜2か月前に行うと、来期の資金計画にもつながります。

また、戦略は社員に繰り返し語られて初めて機能します。共有の工夫:

記入サンプル:ミナト精工の月次経営会議(7月度)

KPIボード(7月度・抜粋)

KPI月次目標5月6月7月信号
Web問い合わせ件数月10件(年度末)4件(サイト公開)7件
新規口座数(累計)7月末 3件122×
平均段取り時間9月末 30分45分41分36分
VE提案件数(累計)月3〜4件ペース4件
現預金月商倍率2.0か月1.71.81.8

議事メモ(7月度・記入例)

項目内容
×の分析新規口座が2件で足踏み。確認すると、技術営業チーム3名のうち1名が既存A社の量産トラブル対応に7月の大半を取られ、新規訪問が計画の半分だった。→ 施策の筋ではなく「実行量」の問題と判断(疑う順番①)
決定事項1A社トラブル対応は品質保証課へ8月10日までに引き継ぐ(担当:製造部長・大野)。技術営業の新規訪問を8月から月12件ペースに戻す。
決定事項2段取り時間は改善傾向だが目標未達。効果の大きかった治具標準化を、残り2ラインへ8月中に横展開(担当:製造課長・西村、9月会議で判定)。
決定事項3Web問い合わせは順調。問い合わせの6割が「試作の短納期」経由と判明したため、事例記事は試作テーマを優先。問い合わせ→商談への転換率を来月から新KPIに追加(担当:営業企画・佐々木)。
次回8月4日(火)15:00。宿題:当座貸越枠の協議状況を経理部長・岡本が報告。

ポイント:×のKPIを「担当者のがんばり不足」で片付けず、原因(既存トラブル対応との両立)を特定して体制の意思決定で解決している点。また、うまくいった施策(Web問い合わせ)からも「なぜ効いたか」を拾って横展開している点。

よくある失敗と対策

ステップ5でつまずくパターン

忙しさを理由に月次会議が流れ、3か月後には戦略が忘れられる
日時を固定して「聖域」にする。フルで無理な月も15分の数字確認だけは必ずやる。ゼロにしない。
会議が数字の詰め・犯人捜しの場になり、悪い報告が上がらなくなる
「×の報告を歓迎する」と宣言し、×には必ず「手当ての決定」で応える。責めた瞬間、翌月から数字は化粧される。
KPIが未達だとすぐ「戦略が悪い」と方針をコロコロ変える
疑う順番(実行量→戦術→施策→戦略)を守る。戦略の変更は年次見直しか、事前に決めたトリガー発生時のみ。
逆に、明らかに効いていない施策を「決めたから」と続けてしまう
3か月ルールで機械的に判定する。撤退した施策は失敗ではなく「安く買えた学び」と位置づける。
戦略が社長の頭の中と会議室にだけあり、現場に届いていない
朝礼・掲示・評価面談の3ルートで繰り返し共有する。「社員が戦略を自分の言葉で説明できるか」が到達度の物差し。

ステップ5完了チェックリスト

  • KPIボードを作り、○△×の判定基準を決めた
  • 月次会議の日時を固定し、向こう3か月分の予定を押さえた
  • 会議の議題(数字→進捗→手当て→決定確認)を型として決めた
  • 「疑う順番」と3か月ルールを参加者で共有した
  • 戦略を臨時見直しするトリガー(取引先喪失・売上急減など)を決めた
  • 年次見直しの時期(決算1〜2か月前)をカレンダーに入れた
  • 社員への共有方法(朝礼・掲示・面談)を決め、最初の1回を実施した
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