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STEP 4 / 5

機能別戦略 —— 部門の施策に落とす

どんなに良い事業戦略も、日々の仕事に翻訳されなければ絵に描いた餅です。マーケティング・営業・製造・人事・財務・ITごとに「今期やる施策を3つまで」に絞り、担当・期限・数値目標をつけます。

このステップのゴール

所要期間の目安は1〜2週間。ここからは部門長・現場リーダーを巻き込んで作ります。自分で決めた施策は実行される、与えられた施策は実行されない——これが実行力の分かれ目です。

📋 アウトプット:機能別アクションプラン(A4で1枚)

全部門の施策を1枚に集約した表。フォーマットは以下のとおりで、1機能につき施策は3つまでが絶対ルールです。

機能施策(3つまで)担当期限KPI(物差し)現状値→目標値
マーケティング個人名年月
営業・販売
製造・オペレーション
人事
財務
IT

進め方:4つの作業

4-1

事業戦略から「各機能への要求」を書き出す

いきなり施策を考えず、まず「事業戦略を実現するために、各機能は何を実現しなければならないか(要求)」を書き出します。この一段を挟むことで、施策が「思いつきのやりたいことリスト」になるのを防げます。

事業戦略の要素(ステップ3)→ 機能への要求(例)
差別化の軸「図面段階からのVE提案」人事:技術提案できる営業の育成/IT:過去の加工実績・見積りを検索できるデータベース
ターゲット「装置メーカーの開発部門」マーケティング:その層に届く媒体(技術サイト・展示会)での発信
「価格勝負はしない」製造:品質の安定と段取り短縮でコストを守る/営業:単価でなく「総コスト」で語る提案書の型
産業機械売上を3年で1.6倍(ステップ2)営業:新規開拓専任の体制/財務:設備投資と売掛金増加に耐える資金計画
4-2

要求ごとに施策を出し、「3つまで」に絞る

要求に対する施策のアイデアを出したら、次の2軸で優先順位をつけて絞ります。

「効果大×実行しやすい」から採用し、1機能3つを超えたら、何かを来期送りにします。施策を絞る痛みを引き受けるのがこのステップの仕事です。10個の施策を薄くやるより、3個を確実にやり切るほうが成果は出ます。

4-3

施策ごとにKPI(物差し)を決める

KPIは「施策がうまくいっているかを毎月確認できる数字」です。良いKPIの条件は3つあります。

条件説明悪い例 → 良い例
担当者が動かせる 担当者の行動で直接変わる数字にする。売上は多くの要因の結果であり、担当者だけでは動かせない 「売上を上げる」→「新規訪問件数」「Web問い合わせ件数」
簡単に測れる 集計に手間がかかるKPIは続かない。今あるデータ・簡単なカウントで取れるものにする 「顧客満足度スコア」→「納期遵守率」「クレーム件数」
先行指標である 結果(売上)より先に動く数字を選ぶと、手遅れになる前に軌道修正できる 「月商」→「見積り提出件数」(提出が増えれば数か月後の受注が増える)
4-4

部門間の整合性をチェックする

最後に、全機能の施策を1枚に並べて「矛盾」と「詰まり」を確認します。これをやらないと、現場で施策同士が衝突します。

記入サンプル:ミナト精工の機能別アクションプラン

機能別アクションプラン(今期・記入例)

機能施策担当期限KPI:現状→目標
マーケティング 加工事例を発信する技術サイトを開設し、事例記事を月2本掲載営業企画・佐々木6月公開Web問い合わせ:0→月10件(年度末)
機械要素技術展(10月)に出展し、試作5日納期サービスを訴求営業企画・佐々木10月名刺獲得300件/商談化30件
営業 技術営業チーム3名を編成し、新規口座開拓に専念させる営業部長・川口4月編成新規口座:年10件
既存顧客へのVE提案を「四半期1件/主要口座」で標準活動化営業部長・川口7月開始VE提案:年40件/採用率25%
製造 段取りの外段取り化・治具標準化で段取り時間を短縮製造部長・大野9月末平均段取り時間:45分→30分
試作専用の機械枠を週3日確保し「試作5日納期」を実現製造課長・西村8月開始試作納期遵守率:98%
人事 熟練技能の動画マニュアル化と技能マップの運用開始総務部長・林通年重要工程の「複数名対応化」:60%→80%
高専・工業高校との連携採用と職場見学会(年4回)総務部長・林通年技能職採用:年5名
財務 5軸加工機(1.2億円)の投資を回収計算のうえ稟議・実行経理部長・岡本+顧問税理士7月稟議回収期間4年以内を確認/補助金活用
売掛金増加に備え当座貸越枠2億円を主力行と設定経理部長・岡本8月末現預金:月商2か月分(5億円)を維持
IT 生産管理システム刷新(紙日報→バーコードによる実績収集)情報システム・青木来年3月稼働日報転記工数:月80時間→0

整合性チェックの結果:当初、製造部長・大野の担当施策が4つあったため、治具標準化を現場リーダーに移管。また「展示会出展(10月)」で訴求する試作サービスは「試作枠の確保(8月)」が先に完了するよう期限を調整した。すべての施策が「開発パートナーとしての差別化」と「高粗利分野へのシフト」のどちらかに直結していることを最終確認して完成。

よくある失敗と対策

ステップ4でつまずくパターン

施策が10個も20個も並び、結局どれも中途半端になる
「1機能3つまで」を機械的に守る。落とした施策は「来期候補リスト」に取っておけば捨てる痛みが減る。
担当が「全員」「店舗」など、誰の仕事か曖昧
担当は必ず個人名にする。「全員の仕事」は「誰の仕事でもない」と同じ。
KPIが全部「売上」になっている
売上は結果指標。担当者の行動で動く先行指標(訪問件数、登録者数、ロス率)に置き換える。
社長が全施策の担当者になっている
1人3施策までのルールで強制的に分散する。任せられないのは施策が大きすぎるサイン——動作レベルまで分解する。
投資が必要な施策に資金の裏付けがない
施策一覧の投資額を合計し、財務の施策(資金計画)と突き合わせる工程を必ず入れる。

ステップ4完了チェックリスト

  • 各機能の施策が「事業戦略への要求」から導かれている(思いつきでない)
  • 施策は1機能につき3つ以内に絞った
  • すべての施策に個人名の担当と期限がある
  • KPIは担当者が動かせる先行指標になっている
  • 現状値と目標値が数字で入っている
  • 特定の人に担当が集中していない(1人3つまで)
  • 施策間の順番の依存と、投資の資金裏付けを確認した
  • 担当者本人が施策づくりに参加した(押し付けていない)
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