全体フロー:上から順に決めていく
戦略は上位のものから順に決めます。上の決定が下の前提になるからです。逆に、日々の運用では下(現場の数字)から上へ情報を戻します。 まずは全体の流れを眺めて、自分がいまどこにいるのかを確認してください。
0. Purpose・Mission・Vision(理念)
創業・承継のとき決めること:戦略より上位にある「目的地」。3つに分けると考えやすくなります。
Purpose(存在意義):なぜこの会社は存在するのか / Mission(使命):会社として何を成し遂げるのか / Vision(将来像):将来どんな状態になりたいのか。
目的地が決まっていなければルート(戦略)は選べません。一方で頻繁に変えるものでもなく、承継や大きな環境変化のときに見直します。
1. 環境分析(外部→内部→SWOT統合)
戦略を考える直前/年1回更新決めること(明らかにすること):外部環境(PEST・ファイブフォース)と内部環境(VRIO・バリューチェーン)を分析し、SWOTで統合してクロスSWOTで打ち手の候補を出します。分析であって決定ではありませんが、以降のすべての決定の根拠になります。
重要:SWOTは分析の出発点ではなく、集めた事実の合流点です。いきなりSWOTから書くと印象論になります。
2. 全社戦略
年1回点検/3〜5年ごとに本格見直し決めること:①事業ドメイン(何屋か)、②事業の組み合わせと資源配分(選択と集中・やめること)、③成長の方向(アンゾフ)、④3年後の数値目標。
3. 事業戦略
全社戦略の直後・事業ごと/年1回点検決めること:①誰に(ターゲット)、②何を(提供価値)、③基本戦略と差別化の軸、④価格方針、⑤勝ち負けの物差し。事業が複数あれば事業の数だけ作ります。
4. 機能別戦略
事業戦略の後/毎期(年度ごと)に更新決めること:マーケティング・営業・製造・人事・財務・ITごとに、施策(3つまで)・担当・期限・KPI。部門間の整合もここで確認します。
5. 経営計画(数字への落とし込み)
戦略確定後/決算の1〜2か月前決めること:中期計画(3〜5年の売上・利益を年度展開)と単年度計画(アクションプランに月次の数値目標と資金繰りを付けたもの)。中小企業ならA4数枚で十分です。
6. 実行と振り返り
毎月(月次会議)/四半期/年1回決めること:KPIの○△×判定と、×への手当て(やめる・変える・テコ入れ)。ズレたら「実行量→戦術→施策→戦略」の順に下から疑います。
一覧表:順番・問い・決めること・見直しのタイミング
| 順番 | 階層 | 答える問い | 決めること(アウトプット) | 見直しのタイミング |
|---|---|---|---|---|
| 0 | Purpose・Mission・Vision | なぜ存在し、どこへ行くか | 存在意義・使命・将来像の一文 | 創業・承継時。原則変えない |
| 1 | 環境分析 | いま何が起きているか | PEST・5フォース・VRIO・バリューチェーン → 3C/SWOT → クロスSWOT(打ち手候補) | 年1回、数字と顧客の声を更新 |
| 2 | 全社戦略 | どの土俵で戦うか | ドメイン一文、事業の役割マップ(選択と集中)、成長方向、3年目標 | 年1回点検、3〜5年または環境激変で本格見直し |
| 3 | 事業戦略 | その土俵でどう勝つか | 事業戦略シート(誰に・何を・差別化・価格・物差し)×事業の数 | 年1回点検。物差しの連続未達や競合の激変で臨時見直し |
| 4 | 機能別戦略 | 各機能はどう支えるか | 機能別アクションプラン(施策・担当・期限・KPI) | 毎期更新。四半期で施策の入替判定 |
| 5 | 経営計画 | 数字でどう表すか | 中期計画+単年度計画(月次目標・資金繰り) | 毎年、決算1〜2か月前に翌期分を作成 |
| 6 | 実行・振り返り | 計画どおり進んでいるか | KPIボードの○△×と手当ての決定 | 毎月の月次会議(60分) |
🧠 各段階を貫く「頭の使い方」
上の流れは作業の順番です。しかし同じ手順を踏んでも、出てくる戦略の質は人によって大きく変わります。差を生むのは、全体構造を俯瞰する視点、勝敗を決める変数を見抜く力、自分の前提を疑う姿勢——いわば戦略思考のOSです。フレームワークを埋めても打ち手が平凡になるときは、道具ではなく頭の使い方を見直してください。
場面別:いつ・何をやるか
| 場面 | やること | 目安の時間 |
|---|---|---|
| 初めて戦略を作るとき | 下の「5つのステップ」を1から順に。走りながら直す前提で、7割の完成度で走り出す | 合計2〜3か月 |
| 毎月 | 月次会議:KPIの○△×確認 → ×への手当てをその場で決定 | 60分 |
| 四半期ごと | 3か月ルールの判定:改善しない施策の撤退・入替。来期候補リストから補充 | 月次会議を30分延長 |
| 毎年(決算1〜2か月前) | 年次見直し:現状分析の更新 → 全社・事業戦略の点検 → 翌期のアクションプラン+単年度計画の確定 → 社員への説明 | 半日〜1日 |
| 3〜5年ごと | 全社戦略の本格見直し:ドメイン・事業の組み合わせ・中期目標を作り直す | 1〜2日(外部専門家を交えるのも有効) |
| 臨時(トリガー発生時) | 主要取引先の喪失/売上2割以上の急減/強力な競合の参入/大きな法改正・原価高騰 → 影響を受ける階層から見直し | 発生から1か月以内に着手 |
年間カレンダーの例(3月決算の会社)
| 月 | やること |
|---|---|
| 1月 | 現状分析の更新(最新の売上データ・顧客の声・競合の動き) |
| 2月 | 戦略見直し会議(半日):全社戦略・事業戦略の点検、翌期の重点を決定 |
| 3月 | 翌期の機能別アクションプランと単年度計画を確定。社員説明会で共有 |
| 4月 | 新年度スタート。KPIボードを翌期版に更新 |
| 毎月 | 月次会議(60分)。6月末・9月末・12月末は四半期判定を追加 |
▲ 決算月が違う場合は、月をずらして読み替えてください(年次見直しは決算の1〜2か月前が目安)。
初めて作る人へ:5つのステップ(期間の目安つき)
分厚い経営計画書は必要ありません。A4で1〜2枚、以下の順番で書き出すだけでも「使える戦略」になります。各ステップの詳しい進め方は、記入サンプルつきの詳細ページで解説しています。
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