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機能別戦略 2/6

🤝 営業戦略
—— 誰に・どう売るかにメリハリをつける

営業の時間は最も貴重な経営資源です。「全部のお客様に平等に」は聞こえは良いですが、実際は優良顧客への手抜きと同じ。優先順位と売り方の型を決めるのが営業戦略です。

いつ決める?何を決める?

順番事業戦略の後、マーケティング戦略と並行して決めます。マーケが「知ってもらい呼ぶ」係、営業が「関係を築き売る」係——両者のターゲット認識が揃っていることが大前提です。
タイミング毎期、顧客ランクと活動計画を更新。訪問件数・成約率は月次で確認
決めること①顧客の優先順位(ランク分け) ②営業プロセスの型と詰まりの特定 ③売り方(価値提案の話法) ④活動量の確保 ⑤KPI
KPIの例新規訪問件数、A客への接触頻度、見積→成約率、客単価、紹介件数

進め方:5つの作業

S-1

顧客をランク分けする(ABC分析)

顧客別売上(ステップ1で集計済み)を大きい順に並べ、3段階に分けます。時間のかけ方に意図的な差をつけるのが目的です。

ランク目安方針
A客売上上位 約2割(売上の7〜8割を占める)接触頻度を最優先で確保。定期訪問・御用聞き・先回りの提案。失注が最大の経営リスクと心得る
B客中位 約3割Aに育つ可能性を見極めて選別投資。年数回の訪問+販促でフォロー
C客下位 約5割訪問はやめ、LINE・DM・電話などコストの低い接点で維持。値引き要求の強い客は勇気を持って手放す
注意:ランクは「売上」だけでなく「粗利」と「将来性」でも見ること。売上は大きいが値引きで粗利ゼロの客をA扱いすると、営業時間が利益を生みません。
S-2

営業プロセスを分解し、詰まりを数字で見つける

「売れない」には必ず場所があります。プロセスを分けて歩留まりを数えると、鍛えるべき一点が見えます。

プロセス数える数字詰まっている場合の手当て
① 見込み客リストリスト件数リスト作りから(商圏の対象先を書き出す)
② 初回接触訪問・接触件数時間確保の問題(S-4へ)。トークではなく回数
③ 提案・見積提案件数ヒアリング不足。相手の困りごとを聞けているか
④ 成約成約率提案内容・価格の伝え方の問題(S-3へ)
⑤ リピート・紹介継続率・紹介数納品後フォローの仕組みがあるか
S-3

「価値で売る」話法を型にする

S-3'

「製品起点」から「外部環境起点」の提案に変える

製品説明から入る営業は、比較され値切られます。顧客を取り巻く環境変化を共有するところから始めると、話の主導権が変わります。

従来(製品起点)これから(外部環境起点)
製品紹介 → 提案 → 見積り 外部環境の共有 → 経営課題のヒアリング → 現状整理 → 解決策の提案 → 導入後の支援 → 次の提案(クロスセル)

ポイントは、最初に「御社の業界では今こういう変化が起きています」と情報を持っていくこと。売り込みではなく情報提供として受け止められ、そこから「うちはどう対応すべきか」という経営課題の会話が始まります。材料はPEST分析で自社が整理したものがそのまま使えます。

環境変化の例顧客への問いつながる提案
法改正・規制強化対応の期限はご存じですか? 準備は進んでいますか?対応に必要な設備・体制・運用支援
取引先からの要求水準の上昇
(品質保証・セキュリティ評価など)
取引先から求められていますか? 今後の取得予定は?要求項目に対応する仕組みづくりと、その運用
人手不足・働き方の変化今の体制で回りますか? どんな働き方を目指しますか?省人化・自動化・外部委託の提案
技術の変化(AI・新素材など)自社の製品・工程への影響をどう見ていますか?新技術への対応、代替される前の打ち手
営業のゴールを変える:目標は「製品を売ること」ではなく「経営課題の相談相手になること」です。相談される関係になると、案件になる前から関与でき、競合より早く提案でき、価格競争になりにくくなります。結果としてクロスセル・アップセル・長期取引につながります。
S-4

営業時間をカレンダーで先に確保する

中小企業の営業の最大の敵はトーク力不足ではなく「営業時間がそもそも取れていない」ことです。営業担当が既存対応や社内業務に埋もれているなら、新規開拓の時間帯をカレンダーで先にブロックし、他の仕事を入れない。ミナト精工が低採算の汎用量産ロットを縮小して技術営業3名を新規開拓専任にしたように、「やめること」とセットで体制と時間を作るのが現実解です。

S-5

KPIは「行動量×歩留まり」で置く

成約数だけを追うと運任せになります。自分で動かせる行動量(訪問件数)と、質を示す歩留まり(成約率)を分けて置くと、どちらを直せばいいかが毎月わかります。

記入サンプル:ミナト精工の営業戦略(産業機械部品の新規開拓)

ミナト精工の例

  • リスト:中部・関東圏の装置メーカー約400社をリスト化し、「開発部門を持つ・自社製品がある」の条件で優先100社を選定
  • 接触:技術営業チーム3名で月12件訪問。初回は売り込まず、加工事例集と精度サンプル(テストピース)を置いてくる
  • 話法:「試作部品の精度不良で開発日程が崩れた経験はありませんか」と困りごとから入り、単価ではなく「開発遅延・不良まで含めた総コスト」で語る
  • 既存(A客):主要10口座は月1回の定期訪問を固定し、四半期に1件のVE提案を持参。値上げ・材料サーチャージは3か月前に対面で説明
  • 記録:失注・断り理由を営業支援システムに記録(「既存取引先との長い関係」が最多 → 新機種立ち上げのタイミングで再訪するルールに)
  • KPI:新規訪問 月12件/試作受注→量産転換率 25%→40%/主要口座の定期訪問実施率 100%

よくある失敗と対策

営業でつまずくパターン

全顧客に平等に時間を使い、A客への訪問が手薄になる
ランク分けを先に行い、A客の訪問予定をカレンダーに固定してからB・Cの時間を組む。
新規開拓に夢中で、既存客のフォローが後回しになる
新規1件の獲得コストは既存維持の数倍。既存フォローを「攻めの営業」と位置づけ、KPI(継続率)で見える化する。
「気合いで件数を回れ」と量だけ求め、歩留まりを見ない
プロセス分解(S-2)で詰まりを特定する。訪問は足りているのに成約しないなら、直すべきは話法や提案。
断られたくなくて、すぐ値引きで取りにいく
値引き権限のルールを先に決める(例:5%まで、それ以上は価値の追加で対応)。値引きで取った客は値引きで去る。

営業戦略チェックリスト

  • 顧客をA・B・Cにランク分けし、時間配分に差をつけた
  • ランクは売上だけでなく粗利と将来性でも見た
  • 営業プロセスごとの数字(件数・歩留まり)を数えている
  • 「相手にとっての利点」で語る話法の型がある
  • 週の営業時間帯がカレンダーで確保されている
  • KPIが「行動量」と「歩留まり」に分かれている
↑ 機能別戦略の全体像