いつ決める?何を決める?
| 順番 | 事業戦略の後。マーケティング・営業が決めた「売る約束」を、現場で守れる体制に翻訳する役割なので、両者の後に詰めるのが自然です。 |
|---|---|
| タイミング | 毎期、重点施策(標準化・投資)を更新。ロス率・納期などの数字は月次で確認。設備投資は案件ごとに判断基準に照らす |
| 決めること | ①QCD(品質・コスト・納期)の優先順位 ②標準化・ロス削減の重点 ③内製/外注の線引き ④設備投資の判断基準 ⑤繁閑への対応 |
| KPIの例 | 廃棄ロス率、不良率、納期遵守率、時間当たり生産量、段取り時間 |
進め方:5つの作業
P-1
QCDの優先順位を事業戦略から決める
品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery)はすべて最優先にはできません。差別化戦略なら品質が第一。ただし「品質最優先=コスト無視」ではなく、「守るもの」と「効率化するもの」を分けます。
| 要素 | 差別化戦略(例:安心・品質)の場合の方針 |
|---|---|
| 品質(Q) | 絶対に守る一線を明文化する(例:原材料の基準、鮮度基準)。ここは効率化の対象にしない |
| コスト(C) | 品質に関係しない部分で徹底的に削る(ロス・手待ち・段取り・在庫)。浮いたコストが品質と利益の原資 |
| 納期(D) | 顧客との約束レベルを決める(例:卸の納品遅延ゼロ、店頭は焼き上がり時刻の告知を守る) |
P-2
標準化とロス削減:「絞る→書く→測る」
- 絞る:品目・工程を絞る(全社戦略の選択と集中の現場版)。品目が減るだけで段取り・在庫・ロスが同時に減る
- 書く:主力商品の手順・分量を文書化する(レシピのグラム表記、写真つき手順書)。目的は品質の安定と属人化の解消——「社長にしか作れない」は事業の最大リスク
- 測る:ロス(廃棄・作り直し・手待ち)を数えて壁に貼る。数えた瞬間から減り始めるのがロスの性質
カイゼンの回し方:大改革は不要です。月1回、現場で「一番ムダだと思う作業」を1つ挙げてもらい、翌月までに1つ直す。年12個の改善は、外部コンサルの提案より確実に定着します。
P-3
内製/外注の線引きを決める
| 判断 | 基準 | 例(ミナト精工) |
|---|---|---|
| 内製を死守 | 差別化の源泉になっている工程 | 高精度加工と最終検査(差別化の源泉そのもの) |
| 外注を検討 | 差別化と無関係で、外部の方が安い・上手い工程 | 表面処理・熱処理、汎用部品の粗加工、梱包・配送 |
| やめる | 内製でも外注でも儲からない工程・商品 | 粗利率5%未満の汎用量産ロット(価格改定できなければ縮小) |
P-4
設備投資は「回収期間×戦略整合」で判断する
- 回収期間:「投資額 ÷ 年間の増加利益(または削減コスト)」で計算し、3〜5年以内を目安にする。回収10年の投資は環境変化に耐えられない
- 戦略整合:「伸ばす」と決めた事業のための投資か?(維持事業への大型投資は要注意)
- 資金の裏付け:自己資金・借入・リースの比較、補助金(ものづくり補助金など)の活用を財務戦略と突き合わせる
- 買う前に試す:中古・レンタル・外注で需要を確かめてから新品を買う
P-5
繁閑の波への対応を決めておく
繁忙期に合わせて人と設備を持つと閑散期に赤字が出ます。基準は「平常時」に置き、山は応援体制・前倒し生産・外注の活用で吸収します。閑散期には標準化・教育・設備メンテなど「忙しいとできない仕事」を計画的に入れます。
記入サンプル:ミナト精工の生産戦略
ミナト精工の例
- QCD:守る一線=「ミクロン精度と医療分野のトレーサビリティ」は絶対に崩さない。そのうえで平均段取り時間45分→30分を目標化
- 絞る:低採算の汎用量産ロットを縮小し、機械と人の時間を多品種少量ラインと試作枠へ付け替える
- 書く:熟練技能者の段取り・測定のコツを動画マニュアル化し、OJTとセットで運用。重要工程の「複数名対応化」を60%→80%へ
- 測る:段取り時間・不良率・納期遵守率をラインごとに週次で掲示。数え始めた月から段取り時間が1割下がった
- 試作枠:週3日の試作専用枠で「試作5日納期」を実現。量産との機械の取り合いは「試作優先」のルールを明文化し、戦略上の理由を現場に説明
- 投資判断:5軸加工機1.2億円は回収期間4年・補助金活用を確認して稟議へ。導入前に外注加工で受注需要を検証済み
よくある失敗と対策
生産・オペレーションでつまずくパターン
- 「忙しくて標準化どころではない」と後回しにし続ける
- 忙しいのは標準化していないから、という因果を認める。まず主力1品だけ手順書化し、効果を体感してから広げる。
- 差別化戦略なのに、現場は「1円でも安く」で動いている
- P-1の「守る一線」を紙にして現場に貼る。何を守り、何を削るかを言葉で共有しない限り、現場はコストに流れる。
- 稼働率を埋めるために採算の悪い仕事を受けてしまう
- 「稼働率のための受注」は忙しくて儲からない典型。受注の可否基準(最低粗利率)を先に決めておく。
- 設備投資が「勘と勢い」で、後から資金繰りを圧迫する
- 回収期間の計算を必須の手続きにする。計算できない(増加利益を見積もれない)投資は、まだ買う段階にない。
生産・オペレーション戦略チェックリスト
- QCDの優先順位と「絶対に守る一線」が明文化されている
- 品目・工程の絞り込みを検討した
- 主力商品の手順・分量が文書化され、社長以外も作れる
- ロスを数えて見える場所に貼っている
- 内製/外注の線引きが「差別化の源泉かどうか」で決まっている
- 設備投資に回収期間の基準(3〜5年)がある
- 繁忙期・閑散期の対応方針が決まっている