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機能別戦略 1/6

🎯 マーケティング戦略
—— 選ばれる理由を「伝わる」形にする

事業戦略で決めた「誰に・何を・どう差をつけるか」を、お客様に届く形に翻訳するのがマーケティング戦略です。どんなに良い差別化も、伝わらなければ存在しないのと同じです。

いつ決める?何を決める?

順番事業戦略の確定後、機能別戦略の中で最初に検討することが多い機能です。「誰に・どう伝えるか」が決まると、営業・IT・製造など他機能の施策の前提が定まります。
タイミング毎期(年度ごと)に施策と販促カレンダーを更新。月次でKPIを確認し、反応の悪い施策は四半期で入替
決めること①伝えるメッセージ(一文) ②4Pの整合 ③顧客接点と施策(既存客優先) ④年間販促カレンダー ⑤予算とKPI
KPIの例LINE登録者数、クーポン利用率、口コミ件数・評点、新規客数、リピート率

進め方:5つの作業

M-1

「伝えるべき価値」を一文にする

事業戦略のターゲットと差別化軸から、お客様の言葉で書いたメッセージを一文作ります。以降のチラシ・SNS・店頭POPはすべてこの一文の言い換えです。

フォーマット:「(ターゲット)のための、(差別化の価値)」
例:「開発の日程を守れる、試作から量産まで任せられる精密加工パートナーです」——自社の特徴(5軸加工機保有)ではなく、顧客にとっての意味(開発日程を守れる)で書くのがコツです。
M-2

4Pを差別化軸に合わせて揃える

マーケティングの4要素(4P)がバラバラだと、メッセージは信用されません。すべてを差別化軸に整合させます

4P問い整合チェック(差別化軸=「安心」の場合)
製品(Product)何を売るか、品揃えは安心を体現する主力品目に絞る。「安さが売り」の商品を混ぜない
価格(Price)いくらで売るか価値に見合う価格を維持。安売り販促は差別化と矛盾する
流通(Place)どこで・どう届けるかターゲットに届く経路を選ぶ(店舗業:店頭・EC/BtoB:直販・商社・Web問い合わせ)
販促(Promotion)どう知らせるか値引き訴求ではなく「安心の理由」(素材・製法・作り手)を伝える
M-2'

STPで「誰に・どんな立ち位置で」を整理する

4Pを決める前に、STPで誰に売り、どう認識されたいかを固めます。事業戦略のターゲット設定を、マーケティングの言葉に翻訳する作業です。

STPやること
S:セグメンテーション
市場を分ける
市場を意味のある切り口で分類する業種別/規模別/購買動機別(価格重視・技術重視)
T:ターゲティング
狙いを定める
その中で自社が勝てる区画を選ぶ技術重視の装置メーカー開発部門
P:ポジショニング
立ち位置を決める
顧客の頭の中で「◯◯といえば自社」となる位置を取る「試作から量産まで任せられる会社」
4Pと4Cは表裏一体:4P(製品・価格・流通・販促)は売り手目線の整理です。同じものを買い手目線で見直したのが4C——顧客価値(Customer Value)・顧客の負担(Cost)・入手の容易さ(Convenience)・対話(Communication)。4Pを決めたら、4Cで「顧客から見てどうか」を検算すると、独りよがりな施策を防げます。
M-3

施策は「既存客→紹介→新規」の順に組む

新規客の獲得コストは既存客の維持の約5倍と言われます。中小企業はまず既存客のリピート、次に紹介、最後に新規の順で施策を組むのが定石です。

優先ねらい施策の例
1. 既存客の維持・リピート取引頻度・取引額を上げる店舗業:LINE公式アカウント、会員カード、季節のDM/BtoB:技術ニュースレター、定期訪問、既存口座の隣の部門への展開
2. 紹介・口コミ信頼ごと新規客を連れてくる店舗業:紹介カード・口コミ依頼/BtoB:顧客の了承を得た導入事例の記事化、業界内の紹介・共同展示
3. 新規客の獲得接点のない層に知ってもらう店舗業:Googleビジネスプロフィール、看板、チラシ/BtoB:技術サイトの事例記事(検索流入)、展示会出展、業界紙
まず整えるべき無料・低コストの基本:店舗業なら①Googleビジネスプロフィール ②LINE公式アカウント ③店頭表示。BtoBなら①自社サイトの導入事例・加工事例ページ(検索で見つかる状態にする) ②既存顧客への定期的な情報発信 ③展示会名刺の名簿化。広告費をかけるのはこれらを整えた後で十分です。
M-4

年間販促カレンダーを作る

販促は思いつきでやると続きません。季節・行事に合わせて年間の山を先に決めます(例:入園入学、母の日、夏休み、ハロウィン、クリスマス、年末年始)。月1枠だけでも「今月は何を推すか」が決まっているだけで、SNSやPOPのネタ切れがなくなります。

M-4'

カスタマージャーニーで「接点の抜け」を見つける

顧客が「知る→調べる→比べる→問い合わせる→買う→使う→また買う/紹介する」と進む道のりを書き出し、各段階で自社が何をしているかを確認します。多くの会社は「知る」と「買う」には力を入れていますが、その間の「調べる・比べる」段階が空白です。

段階顧客の行動自社が用意するもの(例)
知る展示会・検索・紹介で存在を知る看板、Web、展示会、紹介の仕組み
調べる「この会社は何ができるのか」を確認する加工事例・実績・お客様の声(ここが空白だと候補から消える)
比べる他社と比較し、社内で説明する比較しやすい資料・見積りの根拠(担当者が上司に説明できる材料)
問い合わせる連絡する問い合わせ導線、返答スピード
使う・また買う納品後に評価するアフターフォロー、定期訪問、事例化の依頼
M-5

媒体ごとにKPIを1つ置く

「なんとなく効いている気がする」を排除します。媒体ごとに1つだけ数字を決めて月次で確認し、3か月動かない施策はやめるか変えます(3か月ルール)。例:LINE=登録者数とクーポン利用率、口コミ=件数と評点、チラシ=持参クーポンの回収枚数。

記入サンプル:ミナト精工のマーケティング戦略

ミナト精工の例(BtoB・年商30億円)

  • メッセージ:「試作から量産まで、開発の日程を守る精密加工パートナー」。Webサイト・展示会ブース・会社案内の言葉をすべてこれに統一
  • 4Pの整合:単価は相場より1〜2割高を維持し、値引きキャンペーンはしない。発信は「加工事例・精度データ・納期遵守実績」という根拠で語る
  • 既存客:主要口座へ四半期ごとに技術ニュースレター(新設備・加工事例・VE事例)を送付し、取引部門の隣の部門(別機種の設計課)を紹介してもらう導線を作る
  • 紹介・事例:納品後の成功事例を顧客の了承を得て記事化。展示会で配布し、顧客側の宣伝にもなる形にする
  • 新規:技術サイトに加工事例を月2本掲載し、「精密加工 試作 短納期」などの検索流入を獲得。機械要素技術展に出展して試作5日納期サービスを訴求
  • KPI:Web問い合わせ 0→月10件/展示会名刺300件・商談化30件/ニュースレター経由の技術相談 年12件

よくある失敗と対策

マーケティングでつまずくパターン

新規客ばかり追いかけて、既存客が静かに離れていく
施策の予算と時間を「既存6:紹介2:新規2」を目安に配分し直す。まず既存のお得意様が喜ぶことから。
SNS・チラシ・広告と媒体を増やしすぎて全部が中途半端
媒体は「ターゲットが実際に見ているもの」2〜3個に絞る。子育て世帯ならLINEと園前接点、法人相手なら訪問と紹介、など。
販促=値引きになっていて、利益と差別化を同時に削っている
値引きの代わりに「おまけ・限定・先行案内」で特別感を出す。価格を下げずに価値を足すのが原則。
発信が自分目線(商品スペックの説明ばかり)で響かない
M-1のメッセージに立ち返り、「お客様の生活がどう良くなるか」で書き直す。ペルソナ(佐藤さん)に話しかけるつもりで。

マーケティング戦略チェックリスト

  • 伝えるメッセージが「顧客にとっての意味」で一文になっている
  • 4P(製品・価格・流通・販促)が差別化軸と矛盾していない
  • 施策が「既存客→紹介→新規」の優先順位で組まれている
  • Googleビジネスプロフィールなど無料の基本が整っている
  • 年間販促カレンダーがあり、今月推すものが決まっている
  • 媒体ごとにKPIが1つずつあり、月次で確認している
↑ 決め方:ステップ4