答えは「いいえ」。生まれたばかりの宇宙は、びっくりするほどシンプルで“対称的”だった。 それが「対称性の破れ」によって少しずつ枝分かれし、今の多様な世界になったんだ。
「宇宙の始まりは、のっぺりして区別のない、ほぼ完璧に対称な世界じゃった。 力もひとつ、粒子もみな似たり寄ったり。そこから冷えていくにつれ、ひとつ、またひとつと 対称性が破れて、いまの豊かな宇宙が枝分かれしていったのじゃ。」
対称=どの向き・どの場所も“対等で区別がない”こと。 その対等さが崩れて、ひとつの状態が選ばれることを対称性の破れというよ。
まっすぐ立った鉛筆は、どの向きも対等(=対称)。でも不安定で、いつか倒れる。 倒れた瞬間、ひとつの向きが選ばれて対称でなくなる=破れ。
てっぺんのボールは全方向に対等(対称)だけど不安定。 転がり落ちるとどこか一方向に決まって安定する。これも対称性の破れ。
真ん中の出っぱりは対称だけど不安定。ボールはふちのどこかに落ちて安定する。 “どのふちか”が選ばれて対称が破れる――物理で有名な形(メキシカンハット)。
超高温の宇宙では“対称”、冷えると“破れる”。温度が下がるたびに、力や物質が分かれていったよ。
4つの力(重力・強い・弱い・電磁気)は区別がなくひとつの力に統一。粒子もみな似ていて、のっぺりした対称な世界。
まず重力が、ほかの力からそっと分かれる。最初の枝分かれ。
次に強い力が分離。このころ宇宙は一気に膨張したと考えられている(大統一の対称性の破れ)。
電弱対称性の破れ。ヒッグス場のはたらきで、電磁気力と弱い力に分かれ、同時に多くの粒子が“質量”を獲得した。
クォークが集まって陽子・中性子に、やがて原子核・原子へ。4つの異なる力と多様な物質がそろい、いまの宇宙の“部品”が出そろった。
※時期や順番は理論にもとづくおおまかなイメージです。高温=対称、低温=破れ、と覚えるとつかみやすいよ。
ヒッグス場の値がゼロで“まっさら”。粒子はみな質量ゼロで、光の速さで飛びまわる、区別のうすい世界。
ヒッグス場が値をもつ(対称が破れる)と、その“まとわりつき”で粒子が質量を獲得。 まとわりつかない光子は質量ゼロのまま、W・Zボソンは重くなった。
「対称性の破れ」は宇宙だけの話じゃない。温度が下がって状態が変わる“相転移”として、身のまわりにもあるよ。
液体の水は、どの方向も同じ(対称)。冷えて氷になると、分子が特定の向きにきれいに整列して結晶ができる=対称性の破れ。
高温では、中の小さな磁石(原子)がバラバラの向き(対称)。冷えると一方向にそろって磁石になる=破れ。
宇宙が冷えて力が枝分かれしたのも、これと同じ仕組み(相転移)。スケールが違うだけで、原理はそっくり。
完全に均一(対称)なままなら、星も銀河も生まれない。じつはごくわずかな“ゆらぎ”が、多様な構造の種になったんだ。
初期宇宙はのっぺり対称
ごくわずかな“濃い・薄い”のむら
濃い所にガスが集まる
均一→不均一な大構造へ
宇宙は「最初から複雑だった」のではない。シンプルで対称な始まりから、 冷えるたびに起こる対称性の破れ(相転移)の連鎖で、4つの力・質量・多様な物質・銀河が枝分かれしてきた。 “シンプルさ”が、今の豊かな世界をつくったんだ。