変わったのではなく、隠れていた
スクリーンの記録そのものが変わったのではなく、隠れていた相関が見えてくる。
気づいたこと
量子力学についてみんなで語り合う会で発表することになり、内容を考えた。 数式を中心に説明するより、「え、どういうこと」「直感では理解できない」「でも実験すると本当にそうなる」という感覚を持ってもらうことを重視したいと思った。
重ね合わせと量子もつれの違いを、たとえで整理できた。 重ね合わせは一人のダンサーが複数の動きを重ねていること。量子もつれは二人のダンサーの動きが切り離せない一つの振り付けになっていること。 量子もつれはスピンだけでなく、位置・運動量・エネルギー・光の偏光など、さまざまな物理量で起こりうる、複数の量子の間の量子的な相関そのものだと分かった。
もつれの多い粒子を全体として見ると、フォン・ノイマンエントロピーは0になりうる。 でも一部分だけを見ると、もつれによってランダムに見える。 「情報がバラバラになった」というより、「情報が粒子同士の関係の中に分散している」という表現の方がしっくりきた。
二重スリット実験を掘り下げていくと、干渉縞が消えるかどうかを決めているのは、「電子がどちらのスリットを通ったか」という経路情報が物理的に区別可能な形で残っているかどうかだと分かった。 人間が実際に見たかどうかではない。
そこからさらに量子消しゴムという実験につながった。 経路を区別できない測定をして、もつれた相方の測定結果でデータをグループ分けすると、それぞれのグループの中に干渉縞に対応するパターンが現れる。 スクリーンにすでに残った点が後から変化するわけではない。変わるのは、どのデータ同士を組み合わせて見るか、ということだった。 消しているのは粒子でも記録でも過去でもなく、「どちらの経路を通ったかを区別できる情報」だった。
今回いちばん重要だと思ったのは、量子力学では「情報」が非常に重要な役割を持っているということ。 それも「人間が知っているかどうか」ではなく、「その情報が物理的に区別可能な形で自然界に残っているかどうか」だった。
まとまったこと
- 発表の流れ: 直感 → 二重スリット(粒か波か) → 重ね合わせ → 量子もつれ → 相互作用・デコヒーレンス → 量子消しゴム → 「情報」が本質なのでは、という構成が面白いテーマとして浮かび上がった
- 重ね合わせ=一人の可能性が重なっている、量子もつれ=二人の関係・組み合わせが重なっている
- 干渉縞が消えるかどうかは、経路情報が物理的に区別可能な形で残るかどうかで決まる
- 量子消しゴムは過去を書き換えるのではなく、隠れていた相関を見えるようにする
まだ言葉になっていないこと
- 粒子数が増えるほどもつれた状態を維持しにくくなる理由(デコヒーレンス)と、量子コンピュータの難しさとの関係の詳細
- 測定問題そのもの(なぜ最終的に一つの結果を経験するのか)の解釈問題
関連ノート
- 経路が残るかどうか、それだけ — 二重スリットと経路情報についての最初の気づきの回。今回はそこに量子もつれと量子消しゴムを重ねて深掘りした
- なぜ世界は釣り合っているのか
元の対話
- 量子力学について語り合う会|発表内容の検討